スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

包装・容器の《売れる》デザインとは

1. 包装・容器の《売れる》デザインとは
 生活用品が、スーパーマーケット、コンビニエンスストアなどセルフサービス販売の店舗で売られることが主流になっている現在では、パッケージデザインの重要性がますます高まっている。パッケージデザインは、マーケティングコミュニケーションを計画するさいの出発点のデザイン活動になっている。パッケージデザインの成功が、当該商品の成功に大きく寄与することは事実であり、またすべての商品に多大な広告費を投資できない現在の経済環境下ではパッケージデザインは、安価で効果的なメディアとも考えられる。
 この稿ではパッケージデザインの基礎的な考え方を踏まえて、多くの買い手に支持してもらえるパッケージデザインを創作することを念頭に置いて記述する。商品が売れるということは様々な複合的要因が介在されると思われる。表題の《売れる》についての解釈は、上記のように買い手が支持してくれる、または好感を持ってくれると言う意味合いで使っている。
 この稿は、私の40年のデザイナー実務経験からの考察であり、私的な感情が出る面もある。その点を考慮に入れて、各人のパッケージデザインの考え方の参考にしていただければ幸いである。

1.1 デザインとは
 「デザインとは何か」この問題は、常に論議され考えられているデザインの基本命題だが、社会の変革、個人の立場などで様々な考えがあり、それぞれの解釈が的を射ている。私は、各自、自前のデザインの定義を持つことがベストと考えているので、各人自分のデザインの定義を考えるに当たって、参考のために幾つかのデザインの定義を示しておく。

1.1.1 デザインの定義
 ヴィクター・パパネック(生き延びるためのデザインの著者)
 ある行為を、望ましい予知できる目標へ向けて計画し整えることが、デザインのプロセスの本質である。

 チャールズ・イームズ(アメリカ、20世紀デザインの巨匠)
 望む目的に最もよくかなうように、必要な要素を組み立てる計画がデザインです。

 出原栄一(旧通産省製品科学研究所)
 デザインとは製造プロセスの一つの工程であって、加工工程に先立って製品の形態を決定する「デザインする」工程を指す言葉である。また、デザインは、以下の3つの条件をみたすようなものである。対象:生活に役立つ実用品、方法:工作に先立って形態を決める、目的:美観と快感の追求。これらの三つの要件をかねそなえたものが、今日の常識的な考え方といってよいだろう。

 デザイン産業研究会中間報告書(平成6年9月、経済産業省)
 現在ではデザインに対する考え方が変化し、デザインの領域は、表面的に視覚でとらえることができる(タンジナブルな)「モノ」のデザインから、人に優しい生活空間の提案、バリアフリーの公共施設のあり方の提案、考え方の提示など視覚で見えない(インタンジナブルな)「コト」のデザインへと拡大していると考えることができ、この傾向は今後更に進展していくと考えられます。

 上記のようにデザインの定義は様々であるが私は、狭義に考えてデザインとは、「目的・条件を持った造形活動」と考えている。例えば、保湿性のあるボディーソープで、メディカルイメージがあり女性を購買ターゲットに考えていて、容器のポンプは現行品を使うがカラーは変更できるというような目的・条件を提示されれば、それに沿ってボトルの形状、ラベルを造形する。これが狭義のデザインと考えている。あまり広義にデザインの定義を考えると職業、プロとしてのデザイナーの使命が曖昧になり、結局デザイナーの使命を果たせなくなるように思えるからである。

1.1.2 パッケージデザインの定義
 日本パッケージデザイン協会の定義では、「物を保護するとともに、その商品情報を提供する創作活動」ということになっている。簡潔な定義だがどちらかといえば商品情報の造形的な創作活動にウエイトがかかった定義になっている。私は、パッケージデザインの一番重要な役割は顧客に商品内容を的確にアピールしコミュニケーションできることだと考えている。すなわち「パッケージデザインとは、包装・容器に商品の内容を買い手に的確に伝達することを目的に社会的条件(環境・安全・使いやすさ)を加味して造形創作すること」と考えている。

1.2包装・容器の役割
 包装・容器には大きく二つの役割の分野がある。商品の広告、宣伝など商品の買い手にその商品の内容や特徴を魅力的に伝える販売促進的な役割と、商品の品質の保持や輸送保管と言った工学的な役割だ。パッケージデザインはそのうち販売促進的な役割の中心的な要素になる。さらに安心・安全性、環境性、インテリ性、なども包装・容器の役割として考えられるようになってきている。以下包装・容器の役割を私流に擬人的に命名して説明することにする。

1.2.1 サイレント・セールスマン(販売促進)
 スーパーマーケット、コンビニエンスストアのようにセルフサービスの販売形式が主流の現在では、包装・容器のサイレント・セールスマンとしての役割は重要であり、まさにこの分野がパッケージデザインと考えてよい。サイレント・セールスマンとは、物言わぬ販売員ということで、包装・容器のデザインを一瞥すれば商品の内容が理解できるという包装・容器の役割である。買い手がパッケージデザインを見て商品の内容を理解し購入に結びつけることが、サイレント・セールスマンとしての重要な役割である。パッケージデザイナーは、この重要な役割を一身に背負って努力している。

1.2.2 サイレント・ガードマン(品質保持)
 商品の破損、腐敗などを防ぎ、商品を保護する役割である。パッケージ・エンジニアリングの
分野で、その中で専門的にさらに細分化される。この役割の発達で私たちの生活は豊かになったが、またその反動で地球環境、安心・安全を脅かす事態になっているのも現実であり、その事態を是正してしくのもこの分野の役割である。

1.2.3 サイレント・メッセンジャー(輸送・保管、ロジスティックス)
 商品を輸送・保管する役割である。地味な役割のように考えがちだが、この役割によって生活者が商品の恩恵に浴することが出来るのである。いわゆるロジスティックスで顧客の要求を満たすために、生産地から消費地までの効率的な「もの」の流れと保管、サービス、および関連する情報を、実施、およびコントロールする役割と考えられる。
 ・上記三つの役割は、包装・容器の三大役割である。サイレント・セールスマン、サイレント・ガードマン、サイレント・メッセンジャーは包装業界で認知されている用語だが、下記は私の造語である。

1.2.4 サイレント・サーバント(ユニバーサルデザイン)
 包装・容器の使いやすさを表現した語である。例えば、注ぎやすさ、開けやすさ、読みやすさ、
などの役割である。ユニバーサルデザイン、ユーザビリティーなどの意味と同じである。

1.2.5 サイレント・クリーナー(環境性)
 包装・容器があるからこそ無駄な廃棄物を出さないという役割である。農産物、海産物など段ボール箱があるから、産地で腐らないで大消費地に届く。この役割は途上国に行くと実感できる。

1.2.6 サイレント・デコレーター(インテリ性)
 包装・容器のインテリアイテムとしての役割である。台所洗剤、ティッシュペーパー、化粧品などは、インテリに置いて雰囲気を損なわないデザイン性が必要とされている。

1.2.7 サイレント・キューピット(贈答性)
 包装・容器の贈答性、ギフト性の役割をこの語に託している。中元、歳暮、また一年中ギフトチャンスという現在では、ギフト性を踏まえたパッケージデザインが求められている。

1.3 パッケージデザインの考え方
 パッケージデザインは、直感的に造形を創作するのではなく、そのパッケージに必要な事柄を念頭に置いて創作することが必要である。ここでは、商品情報という直接的な事項ではなく、いまパッケージデザインに求められるであろう、どちらかと言えば、パッケージデザインの背後にある大きな考え方の要約を個々に示すことにする。換言すれば、パッケージデザインの創作思想である。パッケージデザイナーは直感的にデザイン創作をしがちであるが、私は、これは間違いであると思っている。結果的に良いデザインが出来たとしても、考え方の裏づけがないと、買い手、クライアントに対し説得力のないデザイン提案になってしまうと思っている。フリーランスの立場で考えると、まず自分が創作したパッケージデザインを世の中に出そうとすればクライアントの承認が必要である。クライアントにデザイン説明する際の背景となる考え方の幾つかを下記に示す。

1.3.1 パッケージデザインはメディア
 包装・容器は、単に商品を保護、輸送や保管するだけに存在するものではない。商品の情報を買い手に伝達する役割がある。いわゆるサイレント・セールスマンである。この考え方の底流は、包装・容器はメディアだと言う暗黙の了解があるように思う。メディアとは、特定の送り手(包装・容器)が、何らかの情報(商品内容)を不特定多数の受け手(買い手)に向けて伝達する際に用いられる道具と解釈できる。一般的に広告・宣伝にかかわるメディアは、テレビ、ラジオ、新聞、雑誌、ウエブなど、どれをとってもそのメディアを採用しようとすれば、多額の予算を必要とする。包装・容器は、その点ただであるから、これを有効に使わない手はないのである。特にセルフサービス販売というスーパーマーケット、コンビニエンスストアなどで扱う生活用品では、包装・容器がメディアであると考えて、パッケージデザインすることが重要なポイントになる。そのほかの分野でも包装・容器はメディアあると考えてパッケージデザインすることで包装・容器の価値が大幅に上がってくる。
 宅急便、佐川急便、ゆうパックなど宅配便の輸送箱を考えてもらいたい。おそらく、おぼろげながらそのデザインが浮かぶと思う。輸送箱が輸送箱の機能だけではなく、個々の宅配便の宣伝メディアになっているのである。農産物の段ボール箱も、産地の特産物のブランド化に伴い、輸送箱機能から脱却してメディア化してきている。各農協が段ボールメーカなどの支援を受けて、近頃段ボールのデザインを重視してきている。缶ビールの段ボール箱も、スーパーマーケット、酒の安売り店に行くと山積みされ、段ボール箱がメディアだなと実感する。包装・容器をメディアだと考えることでパッケージデザインの創作思考が拡大すると思う。

1.3.2 パッケージデザインの記号論
 (1) 記号の定義
 ・記号は知覚可能なものである。
 ・知覚可能な記号自身を通じて、知覚不可能なものを伝える。
 簡単に言い換えると、SONYというロゴを見たときS.O.N.Yという文字ではなくSONYという会社のイメージを伝える、そういうものが記号である。
 (2) パッケージは記号
 私は、パッケージを記号と考えている。パッケージを見ただけで、どんな商品か理解できない
といけないし、旨さ、効能、特徴など視覚できない内容をパッケージデザインを通じて買い手に伝えなければならない。まさしくパッケージデザインは、商品の記号と考えてよい。売れるパッケージデザインを考えるとき、商品の内容、特徴をいかに造形するか、売れるパッケージを創作する上で重要な事項と考えている。

3.3.3 MAYA段階理論
 MAYA段階理論とは、レイモンド・ローウィが「口紅から機関車まで」(原題:Never Leave Well Enough Alone,もっと良くしなければいけない)のなかで唱えたデザイン・マーケティング理論で、1940年頃に考え出したとされている。デザインをマーケティング思考で考えた最初の理論と思われる。「口紅から機関車まで」は、1956年に日本で藤山愛一郎氏により翻訳され出版されている。
MAYAとは、Most Advanced Yet Acceptable、すなわち「先進的ではあるがまだ受け入れられる」
ということで、新しいものの誘惑と未知のものに対する恐れの臨界点と解釈されている。ここ
にレイモンド・ローウィの説明を要約しておく。
いろいろなものをデザインしていくうちに世間一般の人がどういうものを喜んで受け入れるかと言うことについて一種の五感を持つようになった。最も前進した製品が必ずしも売れないという、すなわちあまり目新しすぎると買いたいという衝動を越えて、買うまいという抵抗に転化してしまうことを発見した。レイモンド・ローウィは、この買うから、買わないの臨界点をMAYA段階と呼んだ。この理論の説明は下記になる。
・ある商品が、有力な会社によって大量生産を続けられるとき、この商品のデザインはその分野の規準として確立される傾向にある
・規準からかけ離れたデザインは、買い手に受け入れられない場合が多い。
・買い手は、デザインを選ぶ場合二つの相反する要因に左右される。それは、新しいものにひきつけられることと、親しみのないものに対しての反発である。「世間の人は新しいものに対しては偏見を持たない―――その新しいものが正確に古いものに似ている限りは」
・デザインが買い手にとってあまり急進的なときは、そのデザインが傑作でも買わない。
・進んだデザインは、作り手にリスクをもたらすが、このリスクを避けてばかりいると、その作り手は滅亡する。賢い作り手は「計算されつくしたリスク」は進んでとる。
・品質、技術、価格のいずれもが正当であるとすれば、「計算しつくしたリスク」は中小企業にとって成功への道である。
・「計算しつくしたリスク」は、MAYA段階を越えたデザインではいけない。MAYA段階を越えたデザインを「コマンド(特攻)スタイリング」という。
このMAYA段階理論は、70年も前のデザイン・マーケティング理論だが、「包装・容器の《売れる》デザインとは」を考えるとき現在でも重要な理論だと思っている。私の40年以上のデザインの実務活動を振り返って見てもこの理論は正鵠を得ていると思える。

レイモンド・ローウィ 1893年パリに生まれる。1919年ニューヨークに渡り、メイシー百貨店のインテリやファッションイラストを手がけ、後にいわゆる工業デザイン、パッケージデザイン、インテリアデザインの先駆者となる。戦後「ピース」のデザインを、当時の180万円で請負って話題となる。不二家、シェル石油などのブランドマークなどもデザインした。

1・3・4 パッケージデザインとPL法
PL(Product Liability)法とは「物を作る企業がその引き渡した“物”の欠陥によって他人の生命、身体、財産に損害を与えたとき、それを作った人、あるいは自分が作ったと言う表示をした人が損害賠償の責任を負う」ということである。従来の民法709条(故意または過失により他人に損害を与えた人は賠償しなければならない)の不法行為を適用する場合と比べて変わったところは、従来は過失がなければ賠償責任を負わなかったものが、製品に欠陥があれば、その欠陥が発生したことについて過失がなくても賠償責任を負うところにある。
製品に欠陥があるかどうかという判断は「製造物が通常有すべき安全性を欠いているか」で判断する。通常有すべき安全性をもっているか持っていないかは基本的に世の中の常識によって決まる。これだと漠然としているのでいくつかの考慮事項を法律上明らかにしている。「製造物の特性」、「通常予見される使用形態」、「製造物が引き渡された時期」がそれであり、それらを含めその他もろもろの事情を総合的に考えて、その“物”が通常有すべき安全性を欠いているか、欠陥があるか考える。
パッケージにおける欠陥の類型は、「製造上の欠陥」(異物の混入、包装ミスなど)、「設計上の欠陥」(法規の不適合、不適切な材料の選定、使用時の安全性の配慮の欠落、誤用防止設計の配慮の欠落など)、「表示上の欠陥」(警告ラベル・取扱説明書の不備、販売パンフレット・広告の不備)、などが考えられる。
パッケージデザインでは、ラベル上の表示の問題、ボトルなどの使用時の安全性が直接関係してくる。《売れる》パッケージデザインにするには見た目ばかりでなくPL法を考慮に入れたデザインも求められている。

1.3.5パッケージデザインと容器包装リサイクル法
容器包装リサイクル法は、家庭から一般廃棄物として排出される容器包装廃棄物のリサイクルシステムを構築することを目的としている。
消費者は、リサイクル(再商品化)しやすく、資源として再利用できる質の良い廃棄物を得られるよう、市町村の定める分別ルールに従ってごみを排出することが求められている。
市町村は、家庭から排出される容器包装廃棄物を分別収集し、再商品化を行う業者に引き渡し、また地域における容器包装廃棄物の排出抑制の促進を担うことが求められている。
事業者は、その事業において用いた、又は製造・輸入した品物の容器包装について再商品化を行う義務を負っている。また、容器包装の薄肉化・軽量化等により、容器包装廃棄物の排出抑制に努めることが求められている。
国は、容器包装廃棄物の抑制ならびにその分別収集及び分別基準適合物の再商品化等を促進するために必要な資金の確保その他の措置を講ずることになっている。
パッケージデザインでは、例えば、資源の問題も絡みボトルの薄肉化・軽量化のデザインが求められ、そこがパッケージデザイナーの腕の見せ所にもなっている。

1.3.6パッケージデザインとユニバーサルデザイン
 ユニバーサルデザインは、ノーシカロライナ州立大学のロナルド・メイス氏(1941-1998)が80年代半ばに提唱した、バリアフリー概念の発展形で、「できるだけ多くの人が利用可能であるようなデザインにすること」が基本コンセプトになっている。急速に高齢社会になりつつある我が国の社会情勢を反映してパッケージデザインの世界でもこの考え方が大きな潮流になっている。デザイン対象を障害者に限定しているバリアフリー(障害を取り除く)とは異なる考え方である。
 ユニバーサルデザインには七つの原則がある。
 ・誰もが公平に使用できること(Equitable use)
 ・使う上で自由度が高いこと(Flexibility in use)
 ・使い方が簡単で、すぐに分かること(Simple and intuitive)
 ・必要な情報がすぐに分かること(Perceptible information)
 ・うっかりミスが危険につながらないこと(Tolerance for error)
 ・身体の負担が少ないこと(Low physical effort)
 ・行動のための大きさと空間を確保すること(Size and space for approach and use)
 包装・容器のユニバーサルデザインの原則は下記になると考えている。
 ・商品の情報を分かりやすくデザインすること。
 ・使いやすくデザインすること。
 ・安全を確保したデザインにすること。
 あえてここに触れるが、大量生産を前提とした包装・容器の現在のような生産の方法ではバリアフリーの考え方を導入した包装・容器は出現しないと考えている。バリアフリーを満足した包装・容器にするためには一つの商品に多数のデザインが必要になり、これは現実的に不可能である。まず包装・容器にユニバーサルデザインの考え方を普及させ、障害者のためには、メーカーが責任を持って包装・容器を使えるように補助具の開発をすべきと考えている。
 関連用語
 ・ユーザビリティー(usability)使いやすさ。
 ・アクセシビリティ(accessibility)IT分野で使われ、使いやすさを意味する。
 ・ノーマライゼーション(normalization)障害者も健常者も均等に社会生活が出来ことを正常と考えること。

3.3.7 パッケージデザインの様式化
 様々の種類の商品を見るとそれぞれ特有のデザイン様式があるとに気が付く。例えば、カップラーメンにはカップラーメン特有のデザインがあり、シャンプーにはシャンプーのデザインがある。私はこのことをパッケージデザインの様式化と呼んでいる。このデザインの様式化は、ある特定の商品をデザインするとき無視しると後のセールスで失敗することがあるので注意しなければいけない。MAYA段階の説明でも規準からかけ離れたデザインは買い手から受け入れられないとあるように、その商品群の規準のデザインを大きく離れてデザインすることの危険性は認識しておくべきである。といっても基準のデザインを意識しすぎて消極的なデザインをしてはデザイナーの資質を問われる。やはりMAYA段階理論を頭に入れて買い手に受け入れられるギリギリところまで革新的なデザインを試みることは必要である。よくデザインの現場では三番手以降の商品販売では一番手のデザインのアレンジでよいというようなことをいう。二番手はそれなりに一番手の商品のデザインに対抗したデザインをすべきといわれている。パッケージデザインは工業デザインと違いカッコ良いデザインばかりではだめで、とても泥臭いデザインが必要な商品もある。また長寿商品では、例えばオロナミンCドリンクのように、一見昔風でもそのパッケージデザインが記号になっているような商品では、買い手に分かるようなデザイン変更はすべきでない。買い手に分からないけど長寿商品のデザインは、大手のメーカーではかなり手を入れてリ・デザインしている場合が多い。
 MAYA段階理論を考えた上で、それぞれの商品群には様式化されたデザインがあることを頭に入れた上でパッケージデザインを創作することが必要と考える。

1.4 パッケージデザインの要素
 パッケージデザインの要素は、大きく造形的な要素と記述的な要素がある。
 造形的要素の中には、レイアウト、ロゴタイプ、シズル写真、イラスト、色彩、形態などがあり、記述的要素には商品名、コピーなどがある。
 パッケージデザインの中に上記の要素がすべて入っているわけではなく、商品の内容によって企画、デザイン時に検討され、どのようなパッケージデザインにするかでデザイン要素も決まってくる。
1.4.1 レイアウト
 Layoutは、ロゴ、シズル写真、コピーなどの配置のことをいう。一般的に商品ロゴは上部に、シズル写真は中央やや下にレイアウトする。ラベル、箱の正面など平面的なデザインでは、素人には分かりにくいが、奥行きを感じる三次元的表現をデザイナーは模索ことがある。空間を無意識に感じされることで、買い手に強いインパクトを与えるデザイン手法で、いわゆる絵画、写真の近景、遠景という手法の応用である。これにより画面を広く感じさせ売り場で買い手にアピールすることを狙っている。レイアウトはパッケージデザインの総まとめのデザイン要素と考えることが出来る。
 一般的に食品のパッケージデザインではいろいろなデザイン要素が入りにぎやかになるが、化粧品など高価な商品はシンプルなレイアウトになりデザイン要素が少なくなる傾向にある。

1.4.2 ロゴタイプ
 社名、商品名のように二個以上(一個の場合もまれにある)の文字をひとまとめにして、シンボル状にしたものをロゴタイプという。
 パッケージデザインでは、社名と商品名が主なロゴタイプである。社名は通常小さく扱われるが、商品名はパッケージデザインの主役と考えてよい。現在はコンピュータ処理で、凝ったデザインのロゴタイプが多くなっているが、不思議に売れ筋商品のロゴタイプはシンプルなものが多い。
 パッケージデザインの質の高いものは必ずロゴタイプに気を使って制作時にかなりブラシアップしている。化粧品の商品名のロゴタイプなどは既成の活字を並べてあるように見えるが、それぞれの文字の形、間隔などに細心の注意を払ってデザインしていると思える。パッケージデザインでは最終的に細部のデザインをどこまで突っ込めるかが、良いパッケージデザインを作るときの決め手になってくる。

1.4.3 シズル写真
 Sizzleは、ステーキ焼き音、油で揚げる時のジュージューという音の意味だが、パッケージデザインでは、食品などの旨そうな写真のことをいう。シズル写真の出来によって商品の売れ行きが左右されると言って過言ではない。買い手に誤解を招かない範囲でいろいろなテクニックがシズル写真上に駆使されている。例えば、容器に入れたスープとそれをすくうスプーンの写真では見た目には気がつかないように、買い手にアピールすることを目的にスプーンを大きくした合成写真を用いていることがある。シズル写真の出来が売れるパッケージデザインを制作する時の大きな要因になることを忘れてはいけない。

1.4.4 イラスト
 説明するまでもなく絵のことで、パッケージデザインでは商品の原料の表現、背景などに使われる。特に商品の原料は写真を使うよりもリアリティーがあり訴求が強い。果物の缶詰で、桃、パイナップル、アプリコットなどのイラストを使うとより旨そうな雰囲気になり、パッケージデザインの質が上がる。難点は現在、良質なイラストを描けるイラストレーターが減ってきていることだ。現物よりも現物を強力に表現できるのがイラストと考えて良い。イラストは手描、またはコンピュータで制作され、まれに粘土などで立体を作り写真にとってイラストとして使いことがある。

3.4.5 色彩
 色彩は、パッケージデザインの重要な項目で第1章の第2節で詳しく記述されている。ここでは説明を省くが、パッケージデザインで買い手に一番残る印象は色彩のようだ。例えば、ポカリスエットと言えば青を、コカコーラは赤を思い浮べる。パッケージデザイン制作時、色彩計画は十分に配慮する事項である。

1.4.6 形態
 容器などの形態は、立体デザインの分野で工業デザイナーが担当する場合が多い。トイレタリー商品、化粧品、飲料ビンなどが主なものである。単にデザイン性ばかりでなく強度、生産性などコストパフォーマンスも考慮に入れたデザインが必要とされる。環境、PL,ユニバーサルデザインを解決したデザインに仕上げることも重要である。
 容器のユニバーサルデザインではハンドリングのしやすさ、持ちやすさが最重要に考えられている。特に大容量ボトル、ガラス瓶で、この点を配慮したデザインが求められている。

1.5 売れている商品のデザイン分析
 (1)伊右衛門/おーいお茶(写真1)
 この売れ筋の二つのお茶飲料は、カラーがグリーン、キャップが白と一見似ているようだが、デザイナーの目で見ると、伊右衛門がはるかにデザインの完成度が高い。商品ロゴも手書き風の古さを感じる明朝体、形態も竹をイメージさせるなど細心の注意を図ってデザインしている。おーいお茶は、全体が野暮ったい。しかし、売り場での訴求力は、おーいお茶が上だ。おーいお茶のパッケージは、既に記号になり、買い手に旨さなどの商品内容をスムースに伝達していると考えられる。パッケージデザインは、カッコ良いデザインが売りにつながるわけではない。多少泥臭いデザインもパッケージデザインとしては成り立つ。泥臭さを意図したデザインを行うこともあるのだ。

写真1

 (2)野菜一日これ一本/一日分の野菜(写真2)
 一日分の野菜を手軽に摂取できる野菜ジュースである。コンビニへ行くと必ずこの二つの商品は並んで置いてある。二つの商品の商品ロゴを囲む形状に注目してもらいたい。「一日分の野菜」は、単純な円形で、「野菜一日これ一本」は、いかにも元気そうな人型である。この二つの商品を見たとき、買い手に対する訴求は、人間型の「野菜一日これ一本」が強い。商品ロゴを囲む形状は、いろいろ工夫をするが、人間型は、珍しい。商品の内容にもマッチし、デザイナーが込めたこの商品への思いが表現できている。商品ロゴを囲む形状という、パッケージデザインでは脇役が、このパッケージデザインのクオリティーを高めている。

写真2

 (3)ポカリスエット/アクエリアス(写真3)
 コンビニで並んで置いてあるスポーツドリンク二種。商品ロゴが大きいアクエリアスが目立ち、買い手に訴求があるように見えるが、果たしてそうであろうか。
前述したパッケージの記号論から考えると、既にポカリのブルーと白のパッケージは、ポカリの記号となり、買い手に商品内容を無言のうちにアピールし、売りにつなげていると考えられる。ロングセラーの商品は、パッケージデザインが記号になっているものが多い。スポーツドリンク、ブルー、ポカリスエットが確立したイメージになっている。

写真3

 (4)レノア/ソフラン(写真4)
 ハンドルの形状が違う柔軟剤二種。ソフランはオーソドックスなハンドルだが、レノアはボトル上部中央に親指が入る程度の穴をあけ、ハンドルの代用にしている。ボトルデザインの現場では、売り場での訴求を強くするため、いかにラベル範囲を大きく取るか腐心する。レノアに注目するとソフランに比べてラベル範囲が、上部中央に穴があるため、小さい。ラベル範囲が小さいデザインは不利であることは、パッケージデザイナーは、皆知っている。レノアがあえてこの形状デザインにしたか考えてみると二つの要因が浮かぶ。第一に、穴を中央上部にすることで売り場での誘目性(珍しいボトルデザイン)と対抗商品との差別化、第二に、使い易さが考えられる。ソフランのようなオーソドックスなハンドルでは、形状の面白みがない。レノアのハンドルが奇異を狙ったものなら評価をできないが、珍しいハンドルで、使い易さをも満足させている。ソフランのボトルデザインよりもレノアのボトルデザインが、はるかに優れていると考えられる。パッケージデザインの形状は、美しい形だけでは訴求力がないし、いわゆる機能主義的な考えだけでは解決しない何かがある。

写真4

 (5)部屋干しトップ/酵素パワートップ(写真5)
 洗濯洗剤トップ二種。両トップの商品ロゴ、トップに注目してもらいたい。部屋干しトップのロゴは正体で、酵素パワートップは斜体になっている。一般的に洗濯洗剤のパッケージデザインは、晴れの屋外のイメージで、躍動的な斜め商品ロゴが多い。部屋干しトップの商品ロゴは静的な正体で、洗濯洗剤の商品ロゴとしては、あまり例がない。しかし、商品内容を考えると、なるほど納得が出来る。部屋干しトップは、洗濯物を部屋の中で干す専用の洗濯洗剤で、部屋の中をイメージしたパッケージデザインが企画当初から求められていたのではないかと考えられる。四角い枠は窓で、正体の商品ロゴは無風を意味し、全体を部屋の中を感じさせるデザインに仕上げている。洗濯洗剤としては地味で単純なパッケージデザインだが、良く商品内容を反映したデザインだ。

写真5

(6)かっぱえびせん(写真6)
 スナック菓子の定番商品「かっぱえびせん」だ。デザインは、ごく普通で、スナック菓子特有のこれでもかという大袈裟なデザインではない。商品ロゴが小さく、えびのイラストが、かっぱえびせんのうまさが止まらないイメージをそれとなく表現している。ロングライフ商品なので当初のデザインとかなり違ってきているが、えびせんの形状、赤い色彩などを踏襲して、かっぱえびせんの本来のイメージは崩していない。ロングライフの商品のデザインでも、社会の変化に伴ってデザインは、頻繁にリ・デザインしている商品が多い。

写真6


3.6 まとめ
 パッケージデザインの定義、役割、要素を示し、パッケージデザインの記号論、レイモンド・ローウィのMAYA段階などにふれ、売れるパッケージデザインついて記述してきた。最後にパッケージデザインの重要項目を三つあげるとすれば、一に、内容物の伝達、二に、誘目性、三に、差別化といえる。これらは、パッケージデザインの要素を、商品内容に合わせて吟味することで、簡単ではないが達成できると考えている。またパッケージデザインにおけるユニバーサルデザインは、開けやすい、読みやすいを留意すれば、その目的の90パーセントは達成できたと、私は考えている。パッケージの環境問題、安全の問題は、パッケージデザインという狭い専門分野のみでは、解決できない。この原稿は、私のパッケージデザインに対してのスタンスを記述したもので、いろいろの批判はあると思うが、甘んじて受けることにする。


参考文献
1) 南堂久史、記号論ハンドブック、勁草出版サービス
2) 前田秀樹、ソシュール講義録注解、法政大学出版
3) ジョン・ヘスケット、インダストリアルデザインの歴史、栄久庵祥二訳、晶文社
4) R.J.フォーブス、技術の歴史、田中実訳、岩波書店
5) 黒田正明他、ユーザー工学入門、共立出版
6) D.A.ノーマン、誰のためのデザイン、野島久雄訳、新曜者
7) レイモンド・ローウィ、口紅から機関車まで、藤山愛一郎訳、学風書院
8) 環境省ホームページ、容器包装リサイクル法とは
9) 北村正彦、包装技術、パッケージデザインからみたバリアフリー、平成13年10月号
10) 北村正彦、包装技術、PLを考慮したパッケージデザイン、平成8年11月号
スポンサーサイト

コメント

コメントの投稿


非公開コメント

プロフィール

marsdesert

Author:marsdesert
北村正彦
寺島デザイン研究所代表取締役
1945年東京生まれ
東京学芸大学卒業
インダストリアルデザイナー
デザインコンサルタント
オブジェ作家
kitamura@ad.il24.net
090-9156-1709

全記事表示リンク

全ての記事を表示する

最新記事
カテゴリ
月別アーカイブ
カレンダー
04 | 2017/05 | 06
- 1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 31 - - -
最新コメント
最新トラックバック
フリーエリア
moondesert_mshkをフォローしましょう
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QRコード
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。